「また同じことを言われた」
受け身すぎる。発信が足りない。
報連相ができていない。
職場が変わっても、
先輩が変わっても、
なぜか毎回同じ言葉が飛んでくる。
そういう看護師、
あなたの周りにもいないだろうか。
あるいは、あなた自身がそうかもしれない。
その「うまく話せない」、
性格の問題じゃない。
転職相談の現場でよく出会う、
あるタイプの看護師がいる。
質問に答えるまでの間が、妙に長い。
文章が途中で消える。
言いたいことはあるのに、
口から出てくる言葉がバラバラになる。
「ちょっとうまく話せないんですけど」
そう言いながら、
それでも一生懸命話そうとしている。
こういう人を
・「やる気がない」
・「コミュ障」
のひとことで片付けるのは、
あまりにも雑だと思っている。
典型的なケース——
療養病院のAさん
あるナースの話をしたい。
仮にAさんとしておく。
経歴はこうだ。
- 新卒で重症心身障害の施設へ。半年で体調を崩して退職。
- その後、家の近くの障害者デイサービスへ。気づけば5年。
- 「このままではいけない」と一念発起して療養病棟へ転職。
- 入職2週間で受け持ちを外され、1年間ずっと補助業務のまま。
そして今、
キャリア相談の電話口で、
こんなことを言っていた。
「今後のキャリアが…なんか…うまくいかなくて
…もう1年が過ぎようとしていて…
やっぱり向いてないのかなって…」
言葉が途切れ途切れで、
質問への返答に毎回10秒以上かかる。
相手が言葉を補完してあげないと、
会話が成立しないシーンが何度も続く。
職場が変わっても、
同じことが繰り返される理由
Aさんは重心でも、療養でも、
まったく同じことを言われていた。
「受け身すぎる」
「自分から発信しなさい」
「報連相ができていない」
場所が変わっても、
人が変わっても、評価が変わらない。
これは本人の「やる気」や
「努力」の問題ではない。
おそらく根っこにあるのは、
情報を処理して言葉にするまでに、
人より時間がかかるという特性だ。
頭の中にちゃんと考えはある。
やる気もある。
でも口から出てくるまでに、
時間がかかる。
タイミングが読めない。
後になってやっと整理される。
これが積み重なると、
職場では
「何を考えているかわからない人」
になる。
先輩は不安になる。
教育担当は手を引く。
気づけば業務から外されている。
「報連相ができない」の正体
よく「報連相ができていない」と指摘される看護師がいる。
でも実は、
報連相のやり方を知らないわけではない。
言うべきタイミングがわからない。
言おうとしたら「今じゃない」
と言われた経験がある。
萎縮して、
だんだん言えなくなった。
そういう積み重ねの結果として
「報連相ができない人」
になっていることが、
実はとても多い。
Aさんもこう言っていた。
「入職した時は、言おうとしたら
『今言わないで』
って言われて。
だんだん萎縮していく
みたいな感じでした」
これ、
本人の問題だろうか?
むしろ教育側の問題でもあると、
僕は思う。
デイサービスで5年続いた、その理由
Aさんがデイサービスで
5年間働けた理由は、シンプルだ。
- 即時判断を求められない
- ゆっくりした関わりが中心
- チームの動きについていけないほどのスピードがない
つまり
「看護師としてのスキルがほぼ不要な、
看護師的な仕事」
だったから続いた、とも言える。
これは批判ではない。
ただ、
「デイで5年やれた私が病院でなぜ通用しないのか」
という問いに、ちゃんと答えを出せないまま転職すると、
また同じことが起きる。
「精神科なら大丈夫」は本当か
こういうケースで、
よく「精神科に行けばいい」というアドバイスが出る。
確かに精神科は、急性期に比べて
- 処置より関わりが中心
- スタッフのコミュニケーション理解度が高め
- 即時判断の場面が少ない
という特徴がある。
だから完全に間違いではない。
ただ、
精神科に行けば解決する、
というほど単純でもない。
場所を変えても、
言語化の特性は変わらない。
報連相の苦手さは変わらない。
処理速度は変わらない。
転職先を変える前に、
自分の特性をちゃんと言語化しておくことが先だ。
本当に必要なのは「整理」だった
Aさんの話を聞いていて、
一番感じたのはこれだ。
誰も、ちゃんと整理してあげていなかった。
職場は「できない」とレッテルを貼って外した。
転職エージェントは条件だけ聞いて横流しにした。
面談はほとんどなかった。
Aさん自身も、
何がダメで、何が得意で、
どこに向かうべきか、
整理できないまま1年が過ぎていた。
言語化が苦手な人は、
整理してくれる人がいるだけで、
驚くほど変わる。
自分では言葉にできなかったことが、
誰かに構造化して返してもらえた瞬間に、
初めて「そうか、私はこういう人間だったのか」と気づく。
最後に
「うまく話せない」は、
弱さじゃない。
ただの特性だ。
問題なのは、
その特性に誰も気づかないまま、
合わない環境に放り込まれ続けることだと思う。
もしあなたが
- 職場を変えても同じことを言われる
- 報連相が苦手で萎縮してしまう
- 頭の中にあるのに言葉が出てこない
そう感じているなら、
一度立ち止まってほしい。
それはあなたが「ダメな看護師」なのではなく、
自分に合った環境と、整理してくれる人に、
まだ出会えていないだけかもしれない。
この記事は、実際のキャリア相談の会話をもとに、
個人が特定されないよう内容を加工して執筆しています。