朝に予定を組んだはずなのに、
ナースコールが鳴る。
処置の時間が迫る。
先輩への報告も、記録も残っている。
気づけば、全部が急ぎに見えてくる。
そこで先輩から言われるのが、
「ちゃんと優先順位考えて」
いや、その“考え方”が、
分からないんだけど。
新人の頃は、
ここでかなり詰まりやすいです。
僕自身、新人の頃は、
「また怒られたくない」が、
頭に残っていました。
患者さんへの影響より、
先輩の反応を気にしてしまう。
そんな時期があったんです。
でも、優先順位は、
「怒られないための順番」
ではありません。
「仕事を速く片づける順番」
でもありません。
今の患者さんへの影響を考える。
先に確認するものを選ぶ。
状況が変わったら、組み直す。
そして新人のうちは、
自分だけで判断できないときに、
早めに助けを求める。
そこまでが、優先順位です。
優先順位で迷うのは「仕事が遅いから」だけじゃない
まず知っておいてほしいことがあります。
複数の患者さんを受け持つ。
予定された業務と、
突然の変化を同時に整理する。
それ自体が、
かなり複雑な仕事です。
厚生労働省のガイドラインでも、
複数の患者さんを受け持ち、
安全に看護を提供する力が、
重視されています。
多重課題を整理する力は、
新人研修で身につけていく、
臨床実践能力の一つです。
つまり、
「新人なのに、
優先順位が分からない」
ではなく、
新人期に、
これから身につけていく力の一つ。
そういうことなんです。
新人看護師29名の目標を、
分析した研究があります。
入職6か月目には、
「優先順位の判断に基づく行動」
が挙がっていました。
ほかにも、
「業務の効率化」
「業務の独り立ち」
この2つが、
目標に挙がっています。
入職半年が近づく頃に、
この悩みが強くなるのは、
不思議ではありません。
「時間管理ができません」
この相談を一緒にほどくと、
単純に動作が遅いのではなく、
- どの患者さんから確認するか決められない
- 途中で予定が変わると立て直せない
- 何を先輩へ頼んでいいか分からない
- 怒られないように全部自分で終わらせようとする
というところで、
詰まっていることが多いです。
ここを、
「もっとテキパキして」
で終わらせても、
なかなか改善しないんです。
結論|優先順位は「5つの質問」で考える
迷ったときに、
頭の中を整理するための、
5つの判断軸です。
- 患者さんに新しい状態変化はないか
- 後回しにすると安全へ影響しないか
- 何時までに確認・準備・実施が必要か
- 苦痛、治療、生活への影響はどうか
- 延期・分担・相談できるものはないか
保存用に、
5つの判断軸を1枚にまとめました。
大切なのは、
この5つを一度決めて、
終わりにしないこと。
勤務中に何度でも見直すことです。
① 患者さんに新しい状態変化はないか
最初に確認したいのは、
「今、患者さんに、
いつもと違うことが、
起きていないか」
です。
新しい訴え。
意識や呼吸の変化。
急なバイタルサインの変化。
こうした変化が疑われるなら、
まず患者さんの状態を、
確認します。
予定していた記録や通常業務は、
いったん止めます。
自分だけで判断できないなら、
その時点で、
先輩やリーダーへ相談します。
新人のうちは、
「これくらいで報告したら怒られるかな」
より、
「自分だけでは安全に判断できない変化か」
を基準にした方がいいです。
「いつもと違う」を拾う考え方は、
こちらの記事で、
詳しく整理しています。
観察の組み立て方から、
見直したい方は、
「観察の順番」の記事も、
どうぞ。
② 後回しにすると安全へ影響しないか
次に考えるのが、患者さんの安全です。
転倒・転落の危険。
ルート類、薬剤、
医療機器、誤認。
そのままにすると、
事故につながらないか。
ここを確認します。
ここで見るのは、
「この仕事は重要か」
ではなく、
「少し遅れた場合、
患者さんにどんな影響が、
あり得るか」
です。
安全への影響が、
自分では判断できない。
その時点で、
早めに確認します。
③ 何時までに確認・準備・実施が必要か
検査、処置、治療、搬送など、
時間や前後関係が、
決まっている業務があります。
朝の時点で、
「今日やること」だけを、
書くのではなく、
「何時までに、
何を確認・準備・実施する
必要があるか」
まで書いておくと、
予定を組み直しやすくなります。
患者さんに状態変化があれば、
予定は変わります。
時間どおりに全部終えること。
それ自体が、
目的ではありません。
④ 苦痛、治療、生活への影響はどうか
生命に直結しなくても、
痛み、不快感、排泄、
食事、休息など、
患者さんの苦痛や生活に、
関わることも看護です。
ここを全部、
「後でいい仕事」にすると、
仕事は回っている。
でも、患者さんを見られていない。
という状態になりやすいです。
優先順位は、
タスク管理だけではありません。
患者さんに今、
何が必要なのか。
それを考えるためのものです。
⑤ 延期・分担・相談できるものはないか
最後に、
「これは本当に、
自分が今、一人で、
やる必要があるのか」
を考えます。
新人の頃は、
「自分の受け持ちは、
自分で全部やらないといけない」
と思いがちです。
でも、看護はチームで行います。
- 他の人へ依頼できないか
- リーダーに調整してもらえないか
- 実施時刻を変更できるか確認できないか
- 自分一人で対応してよい内容なのか
ここまで含めて考えます。
全部自分で処理すること。
仕事ができること。
この2つは、同じではありません。
「全部大事」が重なった瞬間の動き方
まず、この4つを声に出す
実際の病棟では、
きれいに1位、2位と、
分かれる方が少ないです。
重要なことが、同時に起こります。
そんなときは、
一度立ち止まる。
そして、この4つを、
言葉にします。
- 今、患者さんに何が起きている?
- 少し遅れたら、安全や治療へどんな影響がある?
- 時間が決まっているものはどれ?
- 自分以外へ依頼・相談できるものはどれ?
たとえば、
いつもと違う訴えがある、
患者さんの確認。
そこへ、時間が決まった、
別の業務が重なったとします。
このとき、
一人で完璧な答えを、
出す必要はありません。
必要なのは、この3つです。
何が気になっているか。
どちらが遅れると、
何が起きるか。
誰に頼めるか。
この3つを整理して、
先輩へ共有します。
2年目看護師14名を、
対象にした研究があります。
そこでも、
多重課題への対応として、
優先度の高い業務を選ぶことが、
示されています。
安全や安楽を踏まえて、
援助を求めること。
状態変化に合わせて、
予定を組み直すこと。
この2つも、示されています。
優先順位をつける力は、
一人で抱え込む力では、
ないんです。
急変時の動き方は、
急変対応の記事で、
整理しています。
新人看護師が詰まりやすい3つのパターン
① 朝に作った予定を守ろうとしすぎる
看護の予定は、崩れます。
むしろ大切なのは、
崩れたあとに組み直せること。
予定変更は失敗ではありません。
患者さんの状態に合わせて、
予定を変えられた。
それは、必要な判断です。
② 全部自分でやろうとする
仕事が重なった時点で、
支援を求めれば間に合った。
それなのに、
限界まで抱えてから、
相談してしまう。
これは本当に起こりやすいです。
「まだ自分でいける」
そう思っている段階で、
一度、進捗を共有します。
SOSは、
限界になってから出すものではない。
③ 患者さんより「怒られない順」で動く
これも、正直あります。
「あの先輩に頼まれたから先にやらないと」
「記録が残ると、また言われる」
「報告が遅いと思われたくない」
緊張する職場ほど、
患者さんへの影響ではなく、
怒られないための順番に、
なりやすいです。
その気持ちは、僕も分かります。
それでも迷ったら、
「後回しにしたとき、
患者さんへの影響が、
大きいのはどちらか」
へ戻ってください。
本人側で変えられること・一人では変えにくいこと
ここは、分けて考えた方がいいです。
本人側で練習しやすいこと
- 朝のタスクを時間つきで見える化する
- 状態変化が起きたら予定を組み直す
- 進捗を早めに先輩へ共有する
- 初めて行う処置は事前に相談する
- 勤務後に「どこで予定が崩れたか」を振り返る
このあたりは、練習で変えていけます。
本人だけでは変えにくいこと
- 受け持ち量が現在の力量を大きく超えている
- 新人が相談できる相手が実質いない
- 指導する人によって判断基準が大きく変わる
- 支援を求めても取り合ってもらえない
- 安全に業務を続けられない状態が繰り返される
この状態なら、
あなたの優先順位能力だけの、
問題ではありません。
プリセプター、教育担当、
リーダー、師長などへ、
業務量やフォロー方法そのものを、
相談する段階です。
「もっと頑張って、速くなる」
だけで解決しなくて、
大丈夫です。
環境によって、
「できない自分」が作られる。
その仕組みは、
こちらの記事で、
詳しく書いています。
「優先順位だけじゃなく、
もう仕事そのものが、
限界かもしれない」
そう感じている方は、
「辞めたい」と思ったときの記事も、
読んでみてください。
次の勤務で使う「4つの枠メモ」
次の勤務では、
メモを、この4つに分けます。
- 気になる患者さん・状態
- 時間が決まっていること
- 今日必ず行うこと
- 支援・確認が必要なこと
保存して、
次の勤務前にメモへ写して使えます。
途中で予定が変わったら、書き直します。
朝にきれいな予定表を作ることより、
今の状況に合わせて更新すること
を意識してください。
そして勤務後は、
- どこで予定が崩れた?
- その瞬間、何を先にした?
- 次なら、誰に何を相談する?
この3つだけ振り返ります。
漠然と、
「優先順位を頑張る」
より、ずっと具体的です。
振り返り方に迷う方は、
振り返りの記事も、
読んでみてください。
先輩へ相談するときは、このまま伝えてOK
迷ったら、
この形をそのまま使ってください。
「今、〇〇と△△が、
重なっています。
〇〇は□□が気になっています。
△△は○時の予定です。
私は〇〇を先に確認します。
△△は調整した方がいいと、
考えています。
どうでしょうか?」
相談前に整理する3点を、
1枚にまとめました。
ポイントは、
「どっちを先にすればいいですか?」
だけで終わらせない。
自分の見立てを、
一言添えること。
先輩側も、
「その考え方でいいよ」
「今回は、ここを先に見よう」
と教えやすくなります。
このすり合わせの積み重ねが、
そのまま、
優先順位を考える練習になります。
報告の組み立て方は、
報告NG5選の記事で、
整理しています。
よくある質問
Q. 優先度が高そうな仕事が2つ重なったら?
患者さんの現在の状態と、
遅れた場合の影響を整理します。
時間制約と、
ほかの人へ頼めるかも確認します。
判断できないときは、
自分の考えを添えて相談します。
Q. 先輩に相談すると「自分で考えて」と言われます
「どうすればいいですか?」
だけでなく、
「私は〇〇を理由に、
Aを先にしようと考えています」
と伝えてみてください。
考え方のどこが合っていて、
どこが違うのか。
指導を受けやすくなります。
Q. いつも残業になるのは、優先順位が悪いからですか?
そうとは限りません。
自分で見直せる要因もあります。
一方で、受け持ち人数や、
フォロー体制など、
一人では変えられない要因も、
あります。
Q. 夜勤でも考え方は同じですか?
基本の視点は同じです。
夜勤では、人数や役割が変わります。
病棟の役割分担に合わせて、
組み直します。
Q. 何か月で一人で判断できるようになりますか?
一律には決められません。
経験する患者さん、部署、
教育体制によって変わります。
ガイドラインでも、
到達時期は施設ごとに、
設定する考え方です。
まとめ|優先順位は、途中で組み直せたらいい
新人看護師の優先順位は、
仕事を速く片づける順番では、
ありません。
迷ったら、
- 新しい状態変化はないか
- 安全への影響はないか
- 時間制約はあるか
- 苦痛、治療、生活への影響はどうか
- 延期・分担・相談できないか
この5つで整理します。
そして、状況が変わったら、
何度でも組み直す。
自分だけでは、
判断できなければ、
早めに相談する。
これも立派な優先順位判断です。
最初から、
ベテランのように、
全部一人で判断できなくて、
大丈夫です。
次の勤務ではまず、
「朝に予定を立てる」
ではなく、
「途中で一度、
優先順位を組み直す」
ことから始めてみてください。
一人で抱え込まず、勤務後に整理したい人へ
「今日のあの場面、
何を優先すれば、
よかったんだろう」
勤務が終わってからも、
一人で考え続けてしまう日が、
あります。
そんなときは、
AI教育支援アプリ、
「マイプリ」で、
その日の出来事を、
言葉にして振り返る方法もあります。
勤務後に、自分の判断を整理する。
次の勤務につなげる。
そんな場所として、
使ってください。
「自分の状況を、
一度、人に話して整理したい」
という方は、
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